tundra-sdiva’s blog

白銀リリィさんが夏を頑張るお話。

7月16日

 

  ゆずっとリリィ☆新作お披露目ステージの日でした。

  ゆずの考えた、真夏の太陽のようなコーデ"ゆずっとリリエンヌパラダイス☆コーデ"のお披露目ショーのステージ。


  先日私が倒れてしまい、その後ろくに練習の時間も取れず、不安を胸に抱きながら迎えた本番の日。ふと2年前の夏のことを、思い出しました。

  療養中の高原でゆずがサマーライブを開いて、私の元へ来てくれたこと。ゆずの声かけで復帰ステージを行なったこと。

  その次の夏は、療養を回避し、夏の高原ツアーをきかくするも、やはり途中で倒れ、それでも周り後輩たちや、ゆずに助けられステージを成功させたこと。


  私の夏に、ゆずがいないことは一度もなかった。そして、今年の夏も。


  ゆずの出番は多く、ユニット以外にソロライブ、ダンスステージ、シャイニースマイルの夏の新作お披露目ショー、そして私たち"ゆずっとリリィ"の夏のお披露目ショーです。


  私はゆずとのユニットでライブステージ、お披露目ショー2つの予定でしたが、私の体調を考慮し結果、ライブは延期。新作ドレスのお披露目ショーのみとなりました。

  ユニットを組んでから、ゆずとたくさん練習した"フレンズアピール"を、ゆずの大好きな夏に、一緒にお披露目できなかったことが悔やまれます。

 

 

  ショーの後、私は倒れるように空調の効いた控え室の隅に横になりました。

  暑さから身体は怠く重く 、思考だけかくるくると回っておりました。ショーの出来は良かっただろうか、ゆずの足を、光を翳らすことはなかっただろうか。

  きっと渋い顔をしていたのでしょう、ゆずが語りかけてきました。

「ゆずっとリリィ☆の新作、お披露目できて楽しかったね。この日の為に二人で頑張った甲斐があったゾ☆

リリエンヌパラダイス☆コーデも、観客のみんなすごい可愛いって言ってくれてたゾ!…ただ、リリエンヌの新しい魅力がみんなに伝わってゆずはすごく嬉しいけど…」

  ゆずはしかめ面をしてこちらを見ました。

「リリエンヌって呼ぶ人が増えて、リリエンヌって呼んでいいのはゆずだけなのに!でもリリエンヌパラダイスコーデって名付けたのはゆずだし…!うむむ、複雑な気持ちだぞ…」


  私があれだけ反対して(どうしても恥ずかしかったのです…)尚ゆずの意思を突き通して決定されたコーディネート名(というか、最早勝手に決められていた)を、今更になって"リリエンヌ"の名が定着することに を抱いたようで。

  さすがはゆず。後先考えないことにおいて右に出るものはいません。今頃になってそんなことを言い出すゆずに対し私は笑うしかありません。爆笑ものです。


  笑いすぎたせいで熱が上がって、気温が落ち着く夜まで寝込みました。ゆずのせいです。後日この件についてはしっかり話をつけねばなりません。

 

  こんな形で私たちの特別な一日、夏の始まりの日を終えました。

  ゆずは言いました。

「今日まとめてお披露目しなかったおかげで、後日大きなステージでユニットソロライブが決定したぞ!これもリリエンヌが貧弱なおかげだね!」

「ゆず、それはおかげとは言いません」

  私はゆずの頭の上に縦に掌を落としました。「イタイゾ。 」

「そうですね、フレンズアピールの練習ができる期間が増えたのですから、また特訓しましょう。今までまだ誰もみたことのない、最高のアピールをわたしたちで出してみせましょう!」

  私はゆずの精一杯の励に今出来る最高のポジティブな気持ちで答えました。

 

  ゆずと、夏の始まりを迎えられたこと、自信をもってパートナーと言える瞬間が来るのでしょうか。色々な思いを胸に抱きながら、卒業前にゆずが私に向けてくれた言葉を私は思いだしていました。

 


  まずは一時の休息を。

7月15日

  昨夜は二人で眠りにつきました。相変わらず寝起きの悪いゆずはまだベッドで眠りこけています。

  今日はお互い別のスケジュールが入っていて、ラストの時間帯に明日のフェスのリハーサルがあります。


  そろそろゆずを起こすことにしましょう。今日は消しゴムでも投げつけてやろうかしら。


  ゆず、私のパートナー。ゆずと一緒なら、夏だって怖くない、と言ったら嘘になりますが。

  ゆずの真夏の太陽のような笑顔と私の氷の歌声で、世間にお見舞いしてやるのです。

"ゆずっとリリィ"という、ベストフレンズを。

 

7月14日

  一昨日のこと、ゆずと喧嘩をしました。

  16日のゆずっとリリィ☆お披露目となる《初夏の激アツサマーフェス 2018》で、私とゆずは"ゆずっとリリィ☆"のブランドドレスお披露目ショーと、フレンズアピールのお披露目ライブの2ステージを予定していました。

  しかし、私の体調の事をゆずが配慮し、当日は負担の少ないお披露目ショーのみにする、と言い出したのです。

  私は、また自分がお荷物になる事、高等部に進学してからフレンズアピールの練習を2人で必死に重ねてきたことを思い出し、とても賛同は出来なかったのです。


「なぜ、お披露目ライブを延期にしたのですか」「私が…お荷物だからですか。」 

  言ってからはっとしましたが、人は心に余裕が無い時、冷静でいられないことを実感します。

「そうじゃない、お披露目だって一気に同じ日にやる必要なんてない、焦ることなんて何もないんだぞ、リリエンヌ」

「でも…あんなに2人で練習したのに…」

「リリエンヌのわからずや!リリエンヌがまた倒れたら練習だって意味なくなっちゃうんだからね!これからも二人でいることがゆず達にとって何より大切なことでしょう?」

「ゆずだって、私に相談もせず勝手に大切なことを決めて!」

「だってリリエンヌに言ったら絶対反対するもん!」


  この辺りで二人ともこれ以上言い合っても仕方がないと、意地を張ったままその場をさり別々の仕事へ向かいました。


  ゆずが私のことを考えてくれている。そんなことは千も承知なのです。ただ、自分の情けなさに、不甲斐の無さに苛立ってしまう。ゆずは何も悪くない。

 

 

そして今日、夜のスケジュールが空いた為、ライブ前にゆずに合わなければと思いゆずの部屋まで行こうと思い立ちました。

  "コンコン"部屋のドアから音がします。

「はい。」私は答え、ドアの元まで向かいました。「ゆずだーゾ☆」

  ゆずには敵いません。結局、先を越されてしまいました。結局、私の部屋で二人でローズティーを飲みながら、たわいもない会話を楽しみなが、夜は更けっていきました。

「明後日のステージ、成功させようね。」

「勿論です。この"リリエンヌパラダイス☆コーデ"も、ゆずと一緒に、最高に輝かせてみせます。」


  私は強く決意した言葉をゆずに、伝えました。

 

7月7日

  雨の予報はズレて晴れ間が少し。そして、私は今これを自室の布団で書いているのです。

  今日はゆずと会う約束をしていた…。


  私はここ数週間の疲労からか、昨夜最後の打ち合わせの最中意識を失い、病院へ運ばれました。…また、私を支えてくれている方々へ、私という負担をかけてしまったという心苦しさと、自分の不甲斐なさに嫌気がさしてしまい、ゆずのお見舞いも突き返してしまったところ、余計自分のことが嫌なものにした見えてきて堪らなくなってしまい、床に伏せたまま夜を迎えました。


  "ゆずっとリリィ☆"を結成して、これからも"ずっとゆずと一緒にいる"という選択肢を、私は取りました。


  "ずっと一緒"…この意味を、考えてしまう私はやはり弱い人間なのでしょうか。ゆずと一緒にいるという選択は、私にとって"逃げなかった証"の一つに、なるでしょうか。

 

今日は七夕。星は雲に隠れて、みえないのです。

 

7月6日

  明日はオフ。ゆずと二人で過ごす予定です。ユニット会見から約一週ぶりにゆずと顔を合わせます。  ”ゆずっとリリィ☆”を組んだものの、ユニットといえど毎日一緒にいられるという話でもありません。

  私には自身のブランド、「ゴシックビクトリア」のデザイナー兼ミューズとして、新作ドレスや、ショップで販売するお洋服のデザインやプロモーションの打ち合わせ、お披露目ライブのスケジュール調整、オーナーのピロシェンコ氏と、今後のゴシックビクトリアの展望や、コンセプトイメージのすり合わせの為、私自身海外に赴くこともあります。  ゆずはゆずで、海外からのさまざまなオファーを蹴り高等部へ進学するも、イベントや海外ライブ、ブランドミューズの仕事も次から次へと舞い込み、S4時代と変わらぬかそれ以上に多忙な日々を送っているようでした。

  稀に、カンストしたゆずの頭から湯気が出ているのを学園の食堂で見かけたときは背後からそっと頭を冷やしたものです。

  その度ゆずはハッとし勢いよく振り向き、眩しい笑顔でこちらをみます。

 

  ここ数日は雨の日が続きました。梅雨明け宣言が出されてからの方がむしろ、雨量の多さとジメジメとした"梅雨らしさ"を感じられることさえ多いように思えました。

  明日はゆずが「星が見たい!」と言っていたので、星を見に行くことになりましたが、今のところ明日の予報は雨。電話の先からゆずのしょんぼりした声が聞こえてきました。

「織姫と彦星は一年に一度しか会えないのに、雨なんて寂しいぞ!ゆずはリリエンヌと一年も会えなくてさらに1年お預けなんて、絶対にムリだもん~。」

  たまにロマンチックな発言をするゆずを私は可愛らしく思います。ゆずってば乙女さん。

  私はしょんぼりした声に向かって語りかけました。

「大丈夫ですよ。雨が降って、私たちがベガとアルタイルを観測できなくとも、その雨雲の上は満天の星空です。誰にもみられず二人きりで密会していることでしょう。静かに二人で時を過ごせる年というのもまた、必要なことです。それに私とゆずは去年も今年の夏も、一緒にいるではありませんか。」

「そっかー!さっすがリリエンヌ!じゃあ雨でもゆずたちも楽しめる、リリエンヌが好きそうな喫茶店があったから明日はそこにいこうね!ステンドグラスがキレイでね、雨の日なんかキラキラ反射してもっとキレイだと思うんだ!」

  電話の先の声は跳ぶように踊るように返ってきました。私の心も飛ぶようにく、穏やかな気持ちになりました。早く飛んでいきたい。

明日が待ち遠しい。


「ふふ、そうですね。では明日はそのお店へ行きましょう。おやすみ、ゆす。」

7月1日

   なんということでしょう。今日のユニット会見で私はゆずに驚かされました。

  太陽が一番に登る時"ゆずっとリリィ☆"の新作発表会見は開かれ、私はゆずと二人で考案した"ゆずっとリリィ☆"ブランドコーデの新作を発表しました。

「ゆずとリリエンヌのユニット新作衣装と、お披露目ステージをしちゃいまーす!」

  席から飛び跳ねてゆずが言います。

「ユニットのブランド名はユニット名通り"ゆずっとリリィ☆"です。そして夏の新作ドレスの発表をいたします!こちらが…」

 

  私は発表とともにスクリーンの側を向き、一瞬仰天しました。私のユニットドレスが"リリエンヌパラダイス☆コーデ"になっているではありませんか!

  会見側のみなさんの「素敵!」「これは夏のビッグニュースだ」「アツイサマーになる」など言葉たちが飛び交う中、私はひとりぽかんとスクリーンをみておりました。

「白銀リリィさんのドレス、リリ"エンヌ"コーデ、とありますが、名前の由来などお教えいただけますか?」 記者の方から質問がなげられ、私はハッとしました。「ゆ、ゆず!私のリリィパラダイスコーデが…リ、リリエンヌ…?パラダイスコーデに…??」「えへへ、リリエンヌ驚いた?」ゆずは言います。

 

「ゆずからのサプライズだぞ!☆」


  なんということでしょう。かの思想家も言いました、【人々は驚くことを愛する。そしてこれこそ科学の種である。】と。 私はふと思いついた名言が、この場の私を表現するにはやや的外れであることを恥じる余裕もありません。

  私が朝ゆずに仕掛けた"消しゴム型クッキー"なんて比ではありません。とんでもないサプライズ返しをお見舞いされました。

「ゆず昨日の夜ピンとヒラメいちゃって!絶対こっちの方が可愛いしリリエンヌの魅力、みんなに知ってもらえるもんねー!」

「ユニットパートナーの二階堂ゆずさんが命名したとのことです!さすがフレンズアピールにも名高いユニット!期待が高まりますね!」記者の方々や関係者が大盛り上がりのまま会見の時間は終わり迎えました。

「こ、このコーデ名で、本当に…」「ふふふ、リリエンヌ。この夏も一緒に頑張ろうね!」

 

  サプライズでも、ゆずには敵いません。全く、我がユニットパートナーであり最愛の友である二階堂ゆず、恐ろしい子…!

7月1日

 


  今日は"ゆずっとリリィ☆"、夏の新作お披露目ステージの発表会見日。 既に外は明るく、まだ暑さが本格的になる手前の時間。

  これからゆずの部屋にゆずを起こしに行くのですが、寝覚めの悪いゆずに、何かイタズラでも仕掛けて飛び起こすようなドッキリでもしようかしら、と思いネタを悩みながら今これを書いています。というのも、昨日の晩、「ピーター・パン」を読んだからでしょうか、物語に引っ張られて少し幼く面白おかしな気分が一晩越しに続いているのです。

  いつもゆずには驚かされてばかりですから、今日は気合の意も込めて、ゆずを驚かせ飛び起こしてみせましょう。では、いざゆずの元へ。