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秋の夜空の元、考え事に耽っていたら、手足が冷え切ってしまっていた--
そんなことすら、握られた手の温かみを感じるまで私自身気付かなかったのです。
「リリエンヌ、もう冷えるから部屋に戻ろう?」
「ゆず、どうして私がここにいるとーー」
「そんなの決まってるゾ!ゆずはリリエンヌの幼なじみだから、リリエンヌのことならなんだってわかるんだゾ!」
いつもの笑顔でゆずは私の疑問に答えました。
握られた手は暖かく、むしろ少し汗ばんでおり、ゆずが今まで私を探し走り回っていた事を示していましたが、私はその事には何も触れずゆずの手を受け入れました。
「ふふっ。ゆず、それでは理由になっていませんよ。」
自然に溢れた笑顔をゆずに向けました。それはなんだかとても久しぶりの感覚のようでした。
私とゆずはいつものように手を繋いで、いつもと違う、静まり返った夜の道を寮へと静かにゆっくりと歩いたのでした。