7月20日
ひんやりと冷たい空間で息を潜めるように過ごし、早5日。
今日は、現26代S4の武道館ライブ。それを知ったのは、ゆずから2人で後輩の勇姿を見に行こう!と、特等席のチケットを渡されたからでした。
ゆずにとっては2年を過ごした特別な場所。私には、到達できなかった、特別な場所。
扉を開きました。もう17時、いえ、まだ17時でしょうか。外の気温は高く、日が落ちる もありません。
前髪で隠した冷えピタを見せないよう大きめのつばの付いた麦わら帽子を被り、私は夏の空の下を歩きます。
瞬間、身体中の体温が上がるのを私は感じました。きゅっと一瞬目を瞑ります。
「リリエンヌ!今日もう大丈夫?」
ゆずが走って私の前まで来たのでした。
「…ゆず。太陽が落ちてきたのかと思いましたよ。」
「相変わらずリリエンヌはポエムっこさんだぞ!それより外、暑いから車で送ってもらうぞ。こっち。」
ゆずと会うのはフェスの日ぶり。世界はあれよりもうすっかり夏に染まっておりました。遠くの入道雲、どこから聞こえる蝉の声。
…こんな時期から鳴き続けて、ただでさえ短い時間しか外で生きられないのに。彼らは何を思い生涯の残り5%を地上で過ごすと決めたのでしょう。私は太陽に手を伸ばします。日傘から出た白い手を焦がす感触が伝わる。
「太陽に、憧れてしまったのでしょうか。」
口からほろりと零した言葉にゆずは気づくこともなく、私たちは武道館へ向かいました。